2024年度から行政書士試験の新しい試験科目にも追加され、行政書士実務を行う上でも知らないでは許されない法律。それが行政書士法です。
毎年必ず耳にする行政書士法違反の逮捕者も、行政書士法を深く理解していれば、犯罪に手を染める人は少なかったはずです。行政書士法の理解不足は、開業の成功どころか、人生を狂わすような事態を招きかねない重大な問題になりかねません。
そのため、数ある行政書士の基本書・実務書の中で、最初に手にとるべき本が今回紹介する「行政書士コンメンタール」。本書の基本情報からオススメポイント、そして読み進める中で感じた気になる点等を詳しくお伝えします。
「行政書士法コンメンタール」の基本情報
書籍名の一部「コンメンタールって何?」と思われる方もいるのではないでしょうか? 行政書士での開業準備をしているにもかかわらず、恥ずかしながら私もその一人です。
コンメンタールとは、法律の条文について一条ずつ説明を加えたものであり、ドイツ語で「注釈書」を意味しています。そのため、行政書士の試験勉強で六法を読む習慣がなかった人でも条文の理解がしやすい特徴があります。
「行政書士法コンメンタール」の基本情報は以下のとおりです。
- 書籍名:新12版 行政書士法コンメンタール
- 著者:兼子 仁(東京都立大名誉教授・法学博士)
- 出版社:北樹出版
- 出版年:2022年3月
- 判型:A5並
- ページ数:238
- 目次(※参照)
※ 以下の3部構成になっています(詳細内容等については、北樹出版のHPをご確認ください )。
1 序説(「行政書士とは」「行政書士法の成立と改正の沿革」等)
2 行政書士法の逐条研究(「総則」「行政書士試験」等)
3 資料編(「行政書士法施行規則“現総務省令”」「組合等登記令“政令[抄]”」等)
「行政書士法コンメンタール」のオススメポイント
行政書士法というニッチな法律とはいえ、他にも行政書士法に関する書籍は存在します。その中で行政書士法を学ぶなら「なぜ行政書士法コンメンタールなのか?」について、オススメポイントを解説します。
行政書士法第一人者による実務的な法律解説書
条文の1つ1つに、他の法律の関連条文から判例や改正沿革等を踏まえての行政書士試験委員長を務めた著者の見解が記述されており、条文解釈だけにとどまらず、行政書士制度の歴史と求められる行政書士像が示されています。
難解な条文を行政書士法の改正沿革や多くの重要資料等をもとに、わかりやすく説明されており、実務的な視点からの解説は行政書士開業者にとって必見の内容になっています。
再版を繰り返している信頼と実績
実務を学ぶための書籍選びは読みやすさ以上に、書籍の信頼と実績は欠かせないものになります。行政書士開業の指針となる行政書士法を理解するための書籍となれば、信頼と実績はより強く求められます。
その点、本書は行政書士法というニッチな分野にもかかわらず、再版を繰り返すことなんと12判(2022年3月に最新12判発行)。それだけ、多くの行政書士開業を目指している者にとって必読書になっていることがわかります。
ちなみにAmazonレビユーでも星5つ中の4.3(※11判2022年5月現在)となっており、多くの読者から評価を得ていることも信頼と実績の裏付けとなっています。
※ 追記:2024年5月に最新版となる新14版が発売されました。
現役行政書士のオススメ本の定番
わかりやすく、かつ信頼・実績もあるとなれば、行政書士のオススメ本の定番となるのは必然です。私が受講した伊藤塾「行政書士実務講座」(下記参照)や現役行政書士のブログやYouTube動画においても、開業時のオススメ本の1つとして紹介されています。
行政書士関連の実務書は、私が資格取得した20年前と比較にならないほど、書籍数は増えていますが、数ある基本書及び実務書のなかで、これだけ多くの行政書士がオススメ本として紹介している書籍は他にありません。
「行政書士法コンメンタール」の気になる点
行政書士法の書籍として人気・知名度的にも、現在これ以上のものはありません。しかし、気になる点もあります。それは以下の3点。
- A5班で文字も小さく単色刷りのため、少々読みにくい
- 図表がなく、条文とその説明の繰り返しのため、読むのが単調になる
- 業際にかかわる記述は、条文解釈により意見が分かれる可能性がある
➀➁については、法律の逐条解説書という性質上いたしかたない部分もありますが、これだけ再版を繰り返している人気書籍なだけに、今以上のわかりやすさを追求する意味でも新しい見せ方も期待したいところです。
③については、行政書士側の視点から書かれている書籍であるため、他士業からは疑問を感じる点もあるようです。誤った解釈をすると罰則等を受ける可能性もあるため、特に注意が必要。少しでも不安に感じることがあれば、行政書士会等をはじめ、身近な士業の先生方の意見を伺いながら知識・経験を深めていくことをオススメします。
【「行政書士法コンメンタール」の回収騒ぎ?について】
「新9版 行政書士コンメンタール」の出版の際には、業際にかかわる重大な記載ミスがあり、出版社よりお詫びと訂正がありました。
出版物にはよくあるミスと感じますが、修正箇所が司法書士の独占業務となる相続登記にかかわる記述だっただけに、一部でちょっとした騒ぎになったようです。
それだけ業際に関することは、士業では重大な問題であるからこそ、行政書士法をしっかり理解することが必要ということにもなります。
おわりに:【開業準備】行政書士実務を学ぶオススメ本①「行政書士法コンメンタール」
行政書士開業に関する基本書及び実務書は、行政書士資格の人気上昇とともに多くの書籍が出版されています。しかしながら、長い間、出版を重ね、行政書士開業者の誰もが知る書籍になると限られています。
その限られた書籍の中でも、もっとも有名な書籍が「行政書士コンメンタール」です。実務を覚えるためには、開業することが一番の早道であることはよくいわれること。しかし、最低限知っておかなければならないことがあります。それが行政書士法の理解。そのために必ず読むべき1冊として、本書を手にとるきっかけになれば幸いです。