新しいことに挑戦することに不安はつきもの。それが人生を左右する大きな決断の末の挑戦となれば、なおさらです。
今まさに20年以上勤務した会社を辞め、50歳目前で行政書士開業に挑戦する私も、毎日のように不安に苛まれています。
しかし、不安があるのは当たり前。長い人生を振り返れば、むしろ不安がない方が準備も疎かになり、失敗する確率が高まることは経験済みです。
行政書士開業においても、正しく不安を理解し、適切な準備をすることが大事。会社を退職してから約1年経過し、私自身が感じている行政書士開業に対する3つの大きな不安と、その不安を軽減するために行っている対処法について解説します。
- 40代・50代以上で行政書士開業を目指している人
- 行政書士開業で不安になる原因を理解したい人
- 行政書士開業するためにしっかり準備して安心したい人
行政書士の開業予定者を襲う不安①「お金」
行政書士の開業資金から、開業後の運転資金、そもそも行政書士で稼げるのか等、開業に対する不安の行き着くところは、すべて金です。聞こえは悪いですが、開業不安の多くは金で解決できるのかもしれません。
お金に関する不安要素
行政書士開業を考えるうえで、想定される「お金」に関する不安は、以下のとおりです。
- 行政書士の開業資金は?
- 行政書士の毎月の運用資金の目安は?
- 行政書士の年収はどのくらい見込めるのか?
行政書士は一般的な起業と比べれば、開業や運転資金は少ないといわれます。ちなみに、行政書士開業に関する書籍やネット等でいわれているそれぞれの目安の下限は…
- 開業資金は、行政書士登録料等で約30万~
- 運転資金は、自宅開業として会費等で約6,000円~
- 年収は、行政書士全体の平均年収は約300万。初年度は収入0も覚悟するつもりで…
開業資金及び運転資金は、あくまでも、開業してとりあえず続けるだけの最低額でしかありません。業務を円滑に行うための備品購入や、集客のための広告費等を考えれば、当然上記の資金では足りないことは明白です。とはいえ、一方で見込み収入0の可能性があるとなれば、開業そのものを躊躇するほどの不安に襲われるのも無理はありません。
お金に関する不安の対処法
私自身の経験及び今後実施予定も含めた「お金」に関する対処法をお伝えします。
副業をする
もっとも現実的な対処法は、副業をすることでしょう。もちろん、行政書士との兼業となれば、業務に集中できないデメリットもありますが、資金繰りに悩み業務に集中出来ないことと比べれば、問題は小さいはずです。
副業をするには、会社員等の今の仕事を続けたまま、副業として行政書士をやるのか、行政書士として開業したうえで、アルバイト等の他の仕事もするのか、大きく分ければ2択になります。
私自身は、前職が副業禁止であったこともあり、後者を選んでいますが、余程の開業資金に余裕がない限り、行政書士業務が安定するまでの副業をすることは考えておくことも必要です。
なお、行政書士の副業については、下記の記事も是非参考にしてください。


融資を受ける
手持ちの資金が少ないままで、開業するのは心素ありません。その意味では、十分な開業資金や1年程度の運転資金を開業前に準備をすることは必須要件です。
用意できたとしても資金が多いにこしたことはありません。自ら用意するのが一番ではありますが、融資を受けることもお金の不安を軽減するための手段になります。特に返済義務のない小規模事業者持続化補助金等は、開業時にすべての行政書士に申請することをオススメできる制度です。
また、金融機関からの融資には以下のメリットもあります。
- 金融機関との信用構築ができる
- 事業計画書の作成等、開業後の実務に活かせる
フリーランスでもある行政書士は、開業時等に限らず、安定的に業務するうえで金融機関の関係性は大事です。融資という形でも、期日を厳守した返済や、しっかりとした事業計画を示すことができれば金融機関からの信用は向上します。
固定費を下げる
「お金」に関して言えば、利益を増やすことも大事ですが、必要最低限に支出を押さえることがもっと大事なことです。一般的な家庭における収支と同様に、通常行政書士の固定費でもっとも大きな割合を示すのが事務所家賃。
つまり、行政書士でいえば自宅開業をすることがもっとも有効な固定費を抑える手段であり、お金の不安の対処法としても効果があるということです。
実際に私自身は自宅開業予定で準備を進めています。家賃や光熱費等がかからないどころか、場合によっては経費にも落とせることを考えれば、そのメリットは計り知れません。おそらく自宅開業の選択ができなければ、行政書士開業の決断には至らなかったと思えるほど、固定費を抑えられることには大きな安心感がありました。
もちろん、自宅開業には一定の要件はありますが、お金に不安を感じるのであれば、もっとも効果的な対処法になるでしょう。

行政書士の開業予定者を襲う不安②「実務」
多くの行政書士の先生が一様にいわれることは、実務は開業後に実践で覚えていくものであるということです。にもかかわらず開業予定者の不安として、一番多く聞かれるのは「実務」に関する不安です。
実務に関する不安要素
実務に関する不安として、開業予定者のよくある質問は以下の内容です。
- 実務全般の知識・経験がない
- 実務に関する人脈がない
- 実務の学び方がわからない
いくら実績のある行政書士の先生が「実務を覚えるのは開業してからで問題ない」といわれても不安になるものです。それが体験談をもとにした説得力のある理由だとしても、私の気持ちの中で、実務に関する不安が消えることはありませんでした。
実務に関する不安の対処法
できるだけ石橋を叩きたい性格の私。そのため、開業が遅れてしまうことは理解しながらも「実務」に関する不安解消のために行っていることがあります。実際に行って、効果を感じている対処法を紹介します。
専門業務を絞る
行政書士の業務範囲が広いことから「覚えなければいけない実務が多過ぎる…」と不安になります。行政書士と名乗り仕事をする以上は、せめて主要業務といわれている実務の基本は押さえておかないといけないと思ってしまうからです。
しかし、結論から言えばそんなことは、そもそもできません。どんなに優秀で経験のある行政書士でも同じことです。「できなくて当たり前」であることを、まず理解しましょう。
とはいえ、すべてできないのでは、さすがに不安です。完全に専門とはいえないまでも、お客さまの基本的な質問には対応できる程度の「専門もどき」な業務をつくることは大切です。他の業務に関しては、必殺の「専門外なのでお時間を少々ください」「他の先生をご紹介します」など、専門業務を絞ってることで、お客さま対応も臨機応変にすることが可能になります。
私自身の行政書士開業に向けて、専門業務を決めた経緯については下記の記事をご覧ください。

人脈を作るではなく洗い出す
行政書士の場合、行政書士事務所や他士業事務所で実務経験を積んで開業するケースは少なく、士業関係者の人脈を作ることが困難な現実があります。この背景を考えれば、開業前から士業の人脈をもっている人の方が珍しいでしょう。
私自身も士業関係のしっかりとした人脈はありません。しかし、これまでの人生を振り返ると、人脈といえなくもない存在に気付くことがあります。
- 自分自身の業務依頼を通じての士業関係人脈
- 知人、友人等の士業関係人脈
- 会社員時代の士業関係人脈
いかがでしょう。この記事をお読みいただいている方の中でも当てはまるものはありませんか? 私はいずれにも、少なからず当てはまる人脈があることに気づきました。
例として…
- 父・母が亡くなったときに相続関係で業務依頼をした司法書士及び税理士
- 大学時代の友人が税理士事務所勤務
- 会社員時代は官公庁からの受託業務がメインの仕事(公務員等の人脈)
①については継続案件があり、いまだに年賀状が届きます。②はそのまま。③は士業人脈とは異なりますが、実務の実態を知るには士業人脈よりも意味のある人脈になるかもしれません。
人脈というには遠いと言われるかもしれませんが、関係性が0の状態と比べれば、相手側も無下な対応はできないはずです。
もちろん、上記の人脈すらないと言われる方もいるかもしれません。しかし、友人・知人が士業に業務依頼したことがないか等、多少でも士業関係との繋がりがないか洗い出してみるてはいかがでしょう?
40・50代以上の開業予定者なら尚更、過去の人脈を辿ることで意外な士業関係人脈がみつかるかもしれません。
行政書士開業前の人脈作りを考えるのであれば、下記の記事も参考にしてください。

実務の学び方の情報精査をする
行政書士の試験内容が実務にまったく直結しないため、実務のための学習法がわからずに不安になることがあります。しかし、ネットの普及とともに、行政書士の実務に関する情報も容易に見ることができる時代になりました。ネットだけでなく、行政書士の実務関連の書籍や講座も充実してきています。
一方で、情報の増加とともに、その情報を精査する必要性も高まっています。行政書士は、昔からヒヨコ狩りともいわれる新人行政書士に対する高額セミナーや商材販売等が蔓延っていた業界でもあります。より一層の注意をしなければなりません。
そのなかで、「確かな情報を得るためにはどうすればよいのか?」といえば、やはり実績のある書籍や講座で学ぶのが一番リスクは低いでしょう。
下記の記事においては、私自身が過去の実績等を基準にして、実務を学ぶためにオススメの書籍や講座を紹介していますので、よろしければ参考にしてください。


行政書士の開業予定者を襲う不安③「集客」
いまや弁護士でも、資格があるからといって集客できる時代ではないと言われます。ましてや、弁護士や税理士等と比較すれば、、世間一般的には知名度が低い行政書士。お客さまをどのように集客するのか不安が大きくなるのは必然です。
集客に関する不安要素
行政書士開業を成功させるために、もっとも重要度・優先度が高く、力を入れなければいけないものが集客です。しかし、お金や実務と比べれば、すぐに必要に迫られることがないため、以下の不安から疎かになる傾向があります。
- マーケティングの知識がない
- コミュニケーションがない
- アナログかデジタルのどちらで集客するべきかわからない
開業で成功するためには、これらの不安に向き合い行動に移すことが必要になります。

集客に関する不安の対処法
ベストな集客方法は、地域性や専門業務によっても異なります。集客不安解消のために、私自身がすでに実行しているもの、そして今後実行予定のものを含めてご紹介します。
マーケティングをブログで学ぶ
一般的な会社員の場合、直接的にマーケティングに携わることは決して多くはありません。そのため、まったくマーケティングについての知識がないことに不安を感じている人もいるのではないでしょうか。
そんなマーケティングを一から学びたい人には、ブログをするのがイチオシです。ブログのアクセス数を伸ばすためには、さまざまなマーケティング技術を必要とするためです。
「Googleサーチコンソール」や「Googleアナリティクス」等の無料の分析ツールを使用することにより、ブログのアクセス数やユーザー数はもちろん、性別、年齢、地域等、さまざまな情報を確認することができます。また、どのようなキーワードで検索してブログを閲覧したのか等、ブログを多くの人に見てもらうために必要となる情報を収集できます。
これらの情報をもとにして、いかにブログ集客を増やしていくのかは、とても実践的かつ有効なマーケティングの勉強にもなります。
ブログを始めたいと思われた方は、是非下記の記事もご覧ください。ブログ界では知らない人はいないブロガーのヒトデさん。私はヒトデさんがブログやYouTubeで発信している内容を見てブログを始めることができました。
また、行政書士になって取り組むべきことは、ブログでやらなければいけないことに非常に似ています。行政書士とブログが似ている理由をさらに詳しく知りたい人は、あわせて下記の関連記事もご覧ください。


コミュニケーション力にこだわらない
40・50代になって、社会人経験も長ければ、自分自身のコミュニケーション力については、ある程度わかってくるものです。だからこそ、行政書士で成功するには営業力が大切といわれると、営業には必要不可欠といわれるコミュニケーション力に不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、コミュニケーション力はあるにこしたことはありませんが、行政書士成功の条件として絶対的なものかといえば、必ずしもそうではないように感じます。
むしろ、40・50代を過ぎて、苦手なコミュニケーション力を磨くのは、現実的には難しいでしょう。そればらば、別の方法で営業を考えた方が建設的です。
今はネット集客等、顔の見えない形で集客することも可能な時代です。飛び込み営業等で自分を売り込む手法ではなくても、新しい集客方法があるのであれば、コミニュケーション力のなさに悲観的になる必要もありません。
それでも、コミュニ―ケーション力を磨きたいと思うのであれば、思い切って行政書士YouTuberとして、情報発信者になるのもよいかもしれません。新しい自分を発見できるかも!?

アナログもデジタルも集客できるものはすべて試す
より具体的に集客を考えていく場合に、ネット等でのデジタル集客にするか、飛び込み営業やチラシ配布等のアナログ集客か迷うことがあります。
これまで、実務講座やYouTube動画等で多くの行政書士の先生の意見を聞いてきましたが、不思議なことに集客効果については意見がわかれることが多い印象です。
意見がわかれることであれば、開業直後の暇な時期にすべての集客方法を試すべきというのが結論になるでしょう。
◆デジタル集客の効果
ホームページは必須であるということは共通していても、ホームページからの集客は殆どないという先生もいれば、集客のほぼすべてがホームページやネット広告からという先生もいます。
これらの違いが生じる理由は、以下の2点にほぼ集約されます。
- 主要取扱い業務の違い
- そもそもデジタル集客に力を入れていない
ネットで情報収集するのが当たり前の若い世代や法人関係からの依頼が多い業務は、当然ながらネットの集客できる可能性は低くなります。
また、すでにある人脈からの紹介等で仕事を受任できているような行政書士は、そもそもネット集客には目を向けていないように感じます。それは業務依頼は殆どないと言っていた先生のホームページを確認すれば一目瞭然です。
ホームページの出来はもちろん、そもそも新しくページ更新している様子もなく放置状態であるからです。
前述したブログをしているとわかりますが、ネットはGoogleが支配している世界でもあります。Googleで検索さればければ、ホームページやブログを作っても、世間の目に触れないことすらあるのです。
それは、Googleがネット上にあるホームページ上のコンテンツの質や更新頻度により、検索順位を決めるからです。そもそも、コンテンツの質が悪ければ、インデックスといわれるGoogle検索に登録すらされないこともあります。
以上のことを踏まえれば、専門業務によりデジタル集客への力の比重は変えたとしても、しっかりとしたホームページを作り、継続的に更新することが集客につながるとうことになります。
◆アナログ集客の効果
一方で、昔ながらのアナログ集客も効果については、デジタル集客同様に行政書士の先生方の意見はわかれます。
しかし、デジタル集客のように圧倒的な効果は見込めなくても、決して多くはないがチラシ配布や飛び込み営業で仕事を得らることはあるようです。
すぐに効果がなくても、昔に配布したチラシを見た人から問い合わせがきたり、飛び込み先ではなく、飛び込み先の取引先から業務依頼がくることもあるとか。
長期的な視野で少しでも集客の裾野を広げておくことで、思いもよらない大きな案件が飛び込んでくるかもしれません。

おわりに
行政書士に限らず、独立開業となれば不安を抱えるのは当然のことです。しかし、その不安の原因を放置したまま、対処もしなければ、不安が不安で終わることなく、開業の失敗にもつながりかねません。
今回の記事は、まだ開業した結果を知らない、あくまでも現在開業準備中の身の戯言ではありますが、一人の開業予定者の体験談として少しでも参考になれば幸いです。

